選び方の基本
教材やサービスを乗り換えるかどうかの判断基準
教材が合わない気がするとき、原因が難度・量・タイミング・子どもの状態のどれにあるかを先に切り分けます。変えても解決しないケース、変えてよいと判断する期間の目安、乗り換えで失うものまで整理しました。
この記事について
- こんな方に向けています
- いま使っている教材やサービスが合っていない気がして、変更を検討している保護者
- 読み終えたときの状態
- 続けるか変えるかを、感覚ではなく基準で判断できる状態
申し込んだ通信教育の教材が、封を切られないまま二か月分たまっている。塾には毎週通っているのに、家ではテキストを一度も開かない。宿題は出しているようだが、答えを写しているように見える。こうした状態が続くと、「この教材は合っていないのではないか」という考えが出てきます。
そこで次のサービスを探し始めるのが自然な流れですが、乗り換えた先でも数か月後に同じ状態に戻ることがあります。教材を替えたのに結果が変わらないのは、止まっていた原因が教材の側になかったからです。原因を特定しないまま手段だけを入れ替えると、同じ結果を別の名前で繰り返すことになります。
続けるか変えるかは、「合っていない気がする」という印象だけでは決められません。この記事では、原因の切り分け方、変えても解決しないケース、変えてよいと判断する条件、そして乗り換えそのものにかかるコストの順に扱います。なお、そもそも子どもとサービスの相性をどう見分けるかは子どもに合う学習サービスをどう見分けるかで扱っているため、ここでは「すでに使っているものを続けるかどうか」に絞ります。
「合わない」は観察の結果であって、原因の名前ではありません
保護者が「合わない」と言うとき、実際に見えているのは次のどれかです。手が止まっている。始めるが最後まで届かない。嫌がる、あるいは無言で固まる。続けてはいるが変化が見えない。
これらは症状であって、原因ではありません。同じ「手が止まっている」でも、問題が難しすぎて止まっているのか、疲れていて止まっているのか、そもそも始める時刻が決まっていないので毎回ゼロから交渉になっているのかで、打つ手はまったく違います。
原因を特定せずに教材を替えると、判断材料が失われます。替えた後に良くなっても、教材が良かったのか、たまたま生活のリズムが整った時期だったのか、区別できなくなるためです。次に迷ったときにまた同じ場所からやり直すことになります。
原因は4つに分けて確かめます
止まる原因は、難度・量・タイミング・子どもの状態の4つに分けると扱いやすくなります。複数が重なっていることもありますが、まず1つずつ確かめます。
| 難度が合っていない | 量が合っていない | タイミングが合っていない | 子どもの状態が原因 | |
|---|---|---|---|---|
| 現れ方 | 最初の数問で止まる。答えを写す。「わからない」と言わずに黙る | 始めるが最後まで届かない。後半が急に雑になる | 取りかかるまでが長い。始めても中断が多い | 教材以外の場面でも集中が落ちている。睡眠や機嫌が普段と違う |
| 家庭で確かめる方法 | 前の学年の同じ系統の問題を数問やらせ、そこは解けるかを見る | 1回分を半分に切って渡し、終わるかを見る | 曜日と時刻を固定して2週間試す | 学校・習い事・友人関係など、学習以外に変化がなかったかを確認する |
| 教材を替えて解決するか | 難度帯が明確に違うものなら解決しうる | 解決しない。量は運用側で調整できる | 解決しない | 解決しない。むしろ負荷が増える |
| 替える前に試すこと | どこまで戻るかを決める | 1回あたりの分量を減らす | 開始の合図を生活の動線に置く | 学習量をいったん最小にして様子を見る |
表の右2列に注目してください。4つのうち教材の入れ替えで解決しうるのは、実質的に難度の問題だけです。量・タイミング・子どもの状態は、どの教材に替えても同じように起きます。
難度が疑わしい場合は、いまの学年の問題ではなく、前の学年の同じ系統の問題で確かめます。前の学年なら解けるなら、難度そのものではなく特定の単元でつながりが切れています。算数のように積み上げが効く教科では、戻る位置の見つけ方が別に必要になるので、算数が苦手な小学生への対応を先に読んだほうが早く片づきます。
教材を替えても解決しないケース
次の4つは、乗り換えの効果が出にくい典型です。
- 開始の条件が決まっていない場合。 「今日はいつやる」を毎回その場で決めている家庭では、教材が変わっても交渉の回数は減りません。時間・場所・開始の合図が固定されていないときは、そちらを先に直します(学習習慣がつかないときに最初に見直すこと)
- 配信される量が生活時間に対して多い場合。 月単位で届く教材は、月の途中で遅れが出ると取り返せません。これは教材の質ではなく割り方の問題で、通信教育が続かない原因で扱っている調整をした後でなければ、次の教材でも同じことが起きます
- 保護者と子どもで目的がずれている場合。 保護者は学力の底上げを期待し、子どもは学校の宿題が終われば十分だと思っている、という状態では、教材への評価が最初から噛み合いません
- 効果を見る期間が短すぎる場合。 導入直後は操作や進め方に慣れる時間が要ります。その期間に出た「うまくいかない」は、教材の適否ではなく立ち上がりの現象です
このうち2つ目と4つ目は、乗り換えを繰り返す家庭で特によく起きます。短い期間で判断し、うまくいかないので替え、また短い期間で判断する。この循環に入ると、どの教材も立ち上がりの段階しか経験しないまま終わります。
変えてよいと判断する条件を、期間と回数で決めます
感覚で決めないためには、判断の期限を先に置きます。編集部としては、次の2つを満たしたときに「変える」と決めることを勧めます。
1つ目は期間です。条件を整えた状態で、教材の1サイクル分(週配信なら4週、月配信なら1か月分)を2回通します。「条件を整えた状態」とは、量を子どもが終えられる大きさに割り、開始の時刻を固定した状態を指します。何も調整していない2か月は、判断材料になりません。
2つ目は回数です。原因の候補に対して調整を2回試し、それでも同じ止まり方をするなら、原因は運用側ではないと考えます。ここで大事なのは、調整を1つずつ行うことです。量を減らすと同時に時間帯も変え、さらに保護者の同席も始めると、何が効いたのか分からなくなります。効いた理由が分からない改善は、次に崩れたときに再現できません。
一方で、この期間を待たずに動いてよい場合もあります。
- 進度がかみ合っていないことが明白なとき(履修していない範囲が続けて出る、逆に既習内容の反復しかない)
- 子どもが強い拒否反応を示し、学習そのものを避けるようになっているとき
- 送迎や受講時間が生活を圧迫し、睡眠時間が削られているとき
- サービス側の運用に不具合があり、問い合わせても改善しないとき
最後の項目は教材の中身とは関係ありませんが、家庭が確認や調整に使う時間は実質的なコストです。改善の見込みが示されないなら、待つ理由はありません。
乗り換えのコストは、金額よりも断絶と再設定に出ます
乗り換えで発生するコストは、解約や新規契約の費用だけではありません。学習が一度途切れること、家庭側の運用を作り直すことの2つが、実際には大きく効いてきます。どの替え方をするかで、その大きさが変わります。
| 同じ型の中で別サービスへ | 型そのものを変える(教材配信型から個別指導型など) | いったん止めて家庭学習だけにする | 併用に切り替える | |
|---|---|---|---|---|
| 学習の断絶 | 小さい。単元の対応を照らし合わせれば埋まる | 大きい。進め方の前提が変わるため、慣れるまでは進度が落ちる | 中程度。何を進めるか決めないまま止めると空白になる | 小さい。ただし主従を決めないと両方が中途半端になる |
| 家庭の再設定 | 提出方法・採点方法・端末の確認で済むことが多い | 時間帯の固定、同席の要否、通信環境まで作り直しになる | 教材の選定と進度管理を家庭がすべて引き受ける | 予定の管理が二重になり、抜けが起きやすい |
| 効果が見えるまで | 比較的早い。1サイクルで傾向が出る | 遅い。最初の数か月は慣れの期間が混ざる | すぐ分かる。続くかどうかがそのまま結果になる | 遅い。どちらが効いたかを分けにくい |
| 向いている状況 | 難度帯や出題形式だけが噛み合っていない | 一人で進める前提そのものが成立していない | 生活側が崩れており、学習の優先度を一時的に下げたい | 特定の教科だけ手当てしたい |
型を変える場合は、効果の判定に時間がかかることを最初から見込んでください。ここを見込まずに始めると、慣れの期間に出た停滞を「また合わなかった」と受け取り、さらに次を探すことになります。
「いったん止める」は選択肢から外されがちですが、生活が崩れているときには合理的です。学習量をゼロにするのではなく、家庭で扱える最小限まで落とし、生活が戻ってから再開します。止めることを負けと考えると、状態が悪いまま次のサービスを重ねることになり、結果として復帰が遅れます。
変えると決めた後、次を選ぶ前にやること
乗り換えを決めたら、すぐ次の候補を探す前に、いまの状態を文章で残します。項目は3つで足ります。
- どんな場面で止まったか(開始前か、途中か、特定の教科か)
- どの調整を試して、何が起きたか
- 子ども本人が言った理由。言葉にできない場合は、そのことも記録する
この記録は、次の候補を評価するときの質問に変換できます。「途中で止まる」が原因なら、1回あたりの分量を家庭側で調整できるかを確認します。「始められない」が原因なら、開始時刻が決まっている形式かどうかを見ます。記録がないまま候補を見比べると、また評判や知名度で選ぶことになり、同じ結果に戻ります。型ごとの違いを整理してから絞り込みたい場合は、小学生のオンライン学習サービスの選び方で比較の手順を扱っています。
契約の終わり方も、次を決める前に確認しておきます。最低利用期間の有無、解約の申し出期限、端末や教材の返却が必要かどうか、月の途中で解約した場合の扱い。これらはサービスごとに異なり、確認せずに新しい契約を始めると、二重に費用が発生する期間ができます。
よくある詰まりどころ
子どもは「このままでいい」と言うが、成績が変わらない
本人が続けたいと言う場合、教材そのものは拒否されていません。変えるべきは教材ではなく、扱い方である可能性が高くなります。解いた後に答え合わせだけで終わっていないか、間違えた問題に戻る手順があるかを先に見てください。やりっぱなしになっている場合、どの教材に替えても成績の変化は出にくくなります。
きょうだいで同じ教材を使っているが、上の子だけ合っていない
同じ家庭・同じ教材でも結果が分かれるのは普通です。ここで下の子に合わせて全体を替えると、うまくいっているほうを崩します。合っていない側だけ扱いを変えるのが原則で、費用や手間の管理を理由に統一すると、後で両方を作り直すことになります。
替えたいが、費用を払った分がもったいない
支払い済みの費用は、続けても取り戻せません。判断に入れるべきなのは、これから発生する費用と時間だけです。ただし、前述の判断期間を満たしていないうちに替えるのは、費用の問題とは別に早すぎます。もったいなさで続けるのではなく、条件を整えた状態でもう1サイクル試したかどうかで決めます。
何が原因か、どうしても切り分けられない
その場合は、量を半分にする調整だけを2週間試してください。量は最も調整しやすく、効果が短期間で出ます。ここで状況が動くなら原因は運用側にあり、まったく動かないなら難度か子どもの状態を疑う、という順で範囲を狭められます。