教科と苦手対策
算数が苦手な小学生にどう対応するか|つまずきの見つけ方
算数の「分からない」は、いま習っている単元ではなく、その前提になっている単元で起きています。前の学年の問題を使ってつまずきの位置を特定し、どこまで戻すかを決める手順と、文章題が解けないときの切り分け方を整理しました。
この記事について
- こんな方に向けています
- 子どもが算数でつまずいており、家庭でどう対応すべきか知りたい保護者
- 読み終えたときの状態
- つまずきの位置を特定し、戻る学年と教材の使い方を決められる状態
計算プリント1枚に30分かかり、途中で鉛筆が止まる。テストを持ち帰っても見せたがらない。国語や社会はそこそこ取れているのに、算数だけ点が落ちていく。算数が苦手という状態は、だいたいこういう形で家庭に見えてきます。
このとき、返ってきたテストの単元をもう一度やり直しても、多くの場合は変わりません。算数は前の単元の上に次の単元を積む構造になっていて、点が取れない原因はたいてい、いま習っている場所より手前にあるからです。原因の位置が分からないまま復習量だけ増やすと、子どもは「やっても分からない」という経験を積み増すことになります。
この記事では、つまずきがどこで起きているかを特定し、どこまで戻すかを決めるまでの手順を扱います。必要なのは、前年度の教材と、返ってきたテスト数回分です。新しく買うものはありません。
算数の「分からない」は、いま習っている単元の外側で起きている
社会や理科は、単元がある程度独立しています。ある単元のテストが悪くても、次の単元は新しい知識として入るので、そこで取り返せます。算数ではこの前提が成り立ちません。九九が即答できなければかけ算の筆算は止まり、わり算の意味があいまいなら割合の式は立ちません。
やっかいなのは、抜けがその場では表面化しないことです。手順だけを覚えれば、その単元のテストは取れてしまいます。意味が入っていないという事実は、数か月後、手順の暗記が通用しない単元に来たときに初めて表に出ます。保護者から見て「急に算数ができなくなった」と感じる時期は、抜けが表面化した時期であって、抜けが生じた時期ではありません。
いま点が取れない単元と、その手前で疑うべき場所は、おおむね対応しています。
| いま点が取れない単元 | 前提になっている力 | 抜けているときの見え方 |
|---|---|---|
| かけ算の筆算 | 九九の即答、位取り | 途中で手が止まる、繰り上がりを書き忘れる |
| わり算の筆算 | かけ算と引き算の往復、商の見当をつける力 | 商を1つずつ試す、1問に極端に時間がかかる |
| 分数の通分・約分 | 倍数と約数、九九の逆引き | 分母をそろえられない、約分し残す |
| 小数のかけ算・わり算 | 位取りと、小数がどれくらいの大きさかの感覚 | 答えの桁がずれても違和感を持たない |
| 割合・単位量あたりの大きさ | わり算の2つの意味、比べる量ともとにする量の区別 | 式が立てられず、出てきた数字を順に割る |
| 面積・体積 | 単位と長さの関係、公式が何を表しているか | 公式は言えるが単位換算で落とす |
右の列にある様子が出ているなら、いまの単元を繰り返すより、真ん中の列に戻るほうが早く終わります。
つまずきの位置は前の学年の問題で特定する
見当をつけたら、実際に解かせて位置を確かめます。前年度のドリルか教科書の章末問題、ノート、時計があれば足ります。
手順は次のとおりです。
- 表で当たりをつけた系統を1つだけ選びます。かけ算の系統、分数の系統、というように、縦のつながりで選びます
- その系統の単元を、新しいほうから古いほうへ並べます
- 各単元から3〜5問だけ出します。多く出すと疲れて、後半の結果が信用できなくなります
- かかった時間を記録します。制限時間は設けません。時間は判定に使うためのもので、子どもに急がせるためのものではありません
- 全問正解し、しかも手が迷わず動いた単元まで来たら、そこがいったんの底です。その1つ新しい側の単元が、戻し先の候補になります
判定は正誤ではなく、速さと迷いで行います。正解していても、指を折る、書いて確かめる、しばらく止まってから書き始める、といった様子があれば、その単元はまだ「道具として使える状態」になっていません。上の単元では、その力を無意識に使いながら新しい内容を理解することになります。道具のほうに注意が取られている間は、新しい内容が入る余地がありません。
この作業でやらないほうがよいことが3つあります。1日で全系統を通してやること。点数を伝えること。そして「これ去年やったよね」と口に出すことです。3つ目は、次の章で扱う抵抗をそのまま呼び込みます。
つまずきの型を4つに分けると、次にやることが変わる
同じ「算数ができない」でも、原因の型によって対応は変わります。型は4つに分かれ、そのうち1つは戻す必要がありません。
| 手続きが抜けている | 数の意味が入っていない | 問題文で落ちている | 作業量に負けている | |
|---|---|---|---|---|
| 見えている様子 | 筆算の途中で止まる、書き方が毎回違う | 式は書けるが、答えの大きさの見当がつかない | 計算問題は解けるのに文章題で手が止まる | 前半は合っていて後半で崩れる、時間切れが多い |
| 確かめ方 | 同じ型の計算を数字だけ変えて出す | 計算させる前に「答えはだいたいいくつになりそうか」を聞く | 問題文を読み上げて解かせる | 問題数を半分にして正答率を比べる |
| 戻す先 | その計算の1つ前の系統 | 数直線や図で意味を扱った単元 | 算数ではなく、読み取りの練習 | 戻さない。1回の量と時間の設計を変える |
| 最初にやること | 問題数を絞った反復 | 1問を図に描かせ、口で説明させる | 保護者が式を立て、計算だけやらせる | 1回を10分程度に区切り、量を半分にする |
4つ目の型は、算数の内容ではなく学習の組み立て方の問題です。前に戻しても改善しません。1回あたりの量と、始める時間の決め方を変えるほうが効きます。この部分は学習習慣がつかないときに最初に見直すことで扱っています。
型は複数が重なることもあります。その場合は、下から順に手をつけます。作業量の問題を放置したまま手続きの反復を増やしても、途中で崩れて判定ができません。
どこまで戻すかは「最後にすらすら解けた地点」で決める
戻す範囲の決め方には、守ると失敗が減る条件が4つあります。
- 戻すのは1系統・1単元だけにします。複数を同時に戻すと、いまの授業がさらに分からなくなり、戻し学習そのものが嫌われます
- 学年ではなく系統で戻します。「3年生の内容をやり直す」ではなく「かけ算の筆算だけやり直す」と決めます。学年でくくると、すでにできている単元まで巻き込むことになります
- 期間を先に決めます。2〜3週間が目安です。終わりが見えない状態は、子どもの側が持ちません
- いまの授業からは離れません。戻し学習は、いまの宿題の前後に10〜15分を足す形にします。授業を止めて過去に戻ると、戻っている間に新しい抜けができます
教材は、前年度に使っていたものの同じページを使うほうが向いています。以前は時間がかかったページが速く終わることが、本人の目に見えるためです。戻し学習は同じ型の反復が中心になるので、採点がその場で返る形式のほうが回転は上がります。形式による違いはタブレット教材と紙教材で差が出る場面で整理しています。
戻し先が2学年以上前になった場合や、系統が2つ以上にまたがった場合は、家庭での組み立てだけでは難しくなります。判断の目安は後半の章で扱います。
「前に戻る」ことへの抵抗をどう扱うか
前の学年の教材を出した瞬間に嫌がる、というのはよくあります。抵抗の中身は、内容が易しいことへの不満ではなく、できない子だと扱われることへの拒否です。学年が上がるほど、きょうだいがいるほど、この反応は強く出ます。
扱い方はいくつかあります。
- 目的を速度に置き換えます。「戻ってやり直す」ではなく「1問にかかる時間を半分にする練習」と伝えます。目的が速さなら、易しい問題を解くことに理由がつきます
- 学年が印刷されている教材は、その部分が目に入らない形にします。コピーして使う、表紙を外す、といった対応で足ります
- 終わりを先に伝えます。「今月いっぱい」と期間が決まっていれば、いまの状態が固定されるわけではないと分かります
- 丸つけは本人にやらせ、保護者は「どこで時間がかかったか」だけを聞きます。保護者が採点役に回ると、間違いの指摘が能力の評価として受け取られます
それでも毎回衝突する場合、原因は教材ではなく役割分担にあります。教える人と生活を管理する人が同一だと、算数の時間が家庭内の緊張と結びつきます。この線引きについては家庭学習で保護者はどこまで関わるかで扱っています。
文章題が解けないのは、計算と読解のどちらで落ちているか
文章題が苦手という相談は、原因が3つに分かれます。どれかは、次の3つを順に試せば切り分けられます。
- 問題文を保護者が読み上げて、解かせます。これで解けるなら、文字を追う作業そのもので落ちています。算数ではなく読みの負荷の問題です
- 式を保護者が立てて渡し、計算だけやらせます。これで解けるなら、立式で落ちています。文章から演算を決める部分が原因です
- 数字を1桁に変えて、同じ構造の問題を出します。これで解けるなら、計算の負荷が高すぎて、考える余力が残っていません
3つとも解けない場合は、場面そのものが想像できていません。この段階では式を教えず、絵や線分図に描かせるところまで戻します。
立式で落ちているときに見るところは、わり算の2つの意味です。「いくつずつ分けるのか」と「何人に分けるのか」が区別されていないと、割合や単位量あたりの大きさで必ず止まります。
ここで避けたい対応が1つあります。「合わせて、と書いてあれば足し算」というキーワード式の解き方を教えることです。短期的には正答率が上がりますが、条件が入れ子になる高学年の問題で崩れ、しかも崩れたときに何が分かっていないのかが見えなくなります。
家庭で抱えきれなくなる線をどこに置くか
家庭で対応できる範囲には限界があります。次のうち2つ以上に当てはまるなら、外の手を借りる段階だと考えて差し支えありません。
- 戻し先が2学年以上前にある、または系統が2つ以上にまたがっている
- 説明のたびに衝突が起き、算数に向かうこと自体が嫌がられ始めている
- 保護者が教え方を調べている時間のほうが、子どもが問題を解いている時間より長い
外部を使う場合、この用途で必要な条件は1つに絞られます。進度を子どもに合わせて後ろへ戻せることです。学年の進度で動く形態では、その時間が取れません。形態ごとの構造の差は個別指導と集団指導の選び分けを、オンラインを含めた型ごとの比較は小学生のオンライン学習サービスの選び方を参照してください。
体験や面談の場では、次の2つを確認します。「いまの学年の内容ではなく、前の単元に戻る使い方ができるか」「戻す範囲を誰が決めるか」。ここが決まらないまま始めると、結局はいまの単元の補習になり、抜けは残ったままになります。
次にやること
今週のうちにできることは3つです。
- 返ってきたテストとプリントを3回分並べます。点数ではなく、手が止まった跡に印を付けます。消しゴムの跡が濃い場所、空欄、途中式のない答えが目印です
- 表を使って系統の当たりをつけ、前年度の教材から3〜5問だけ出します。かかった時間を記録します
- 底が見つかったら、期間を2〜3週間に区切り、1単元だけ戻します
期間が終わったら、最初に出したのと同じ問題をもう一度出します。別の問題ではなく、同じ問題です。速くなっていれば見立ては合っています。正答率も時間も変わらないなら、戻し先を1つ手前にずらすか、型の見立てを変えます。
位置の特定が一度で当たることは、あまりありません。2回か3回はやり直す前提で始めるほうが、途中でやめずに済みます。範囲を1単元に絞るのは、外したときに戻し直せるようにするためでもあります。