教科と苦手対策

小学生が作文を書けないとき、どこで止まっているか

作文が書けない状態は、題材・順番・一文・終わりの位置・型の固定という5か所のどこかで止まっています。どこで止まっているかを家庭で見分ける方法と、直しをどこまで入れるか、外部に出す判断までを整理しました。

公開 更新 カテゴリ 教科と苦手対策 読了目安 約8分

編集 まなび相性ラボ編集部

白い作文用紙を前に考え、保護者の助言を受ける小学生
算数や国語など教科別の学びを整理した編集イラスト

この記事について

こんな方に向けています
子どもが作文を書けずに止まってしまい、家庭でどう手を貸せばよいか決めたい保護者
読み終えたときの状態
5つの止まり方のどれに当たるかを特定し、家庭で変える箇所を1つ決められる状態

原稿用紙を出して20分たっても、1行目が埋まりません。「何を書けばいいか分からない」と言うので、昨日の出来事を一緒に思い出し、話としてはひととおり出てきたのに、鉛筆はまた止まります。しびれを切らして「何でもいいから書きなさい」と言うと、3行だけ書いて「楽しかったです」で終えたものを差し出してきます。

作文は、ほかの教科より家庭で見当をつけにくい領域です。算数なら、どの問題で手が止まったかが答案に残ります。漢字なら、書けた字と書けなかった字が分かれます。作文には照らし合わせる正解がないため、書けていないことは分かるのに、何が原因なのかは提出物から読み取りにくくなっています。

ただ、止まる場所そのものは限られています。題材が出ない、順番が決まらない、頭にあることが文にならない、書き始めたが終わらない、書けるが毎回同じ形になる。この5つのどれかです。どこで止まっているかが決まれば、その日に家庭でやることも変わります。ここでは、その見分け方、直しをどこまで入れるか、読み手を家庭の外に移す時期をどう判断するかを順に扱います。

「書けない」は5つの止まり方に分かれる

同じ「書けない」でも、止まっている場所によって効く手はまったく違います。よくないのは、どこで止まっているか分からないまま、思いついた対応を全部やってしまうことです。材料を出させながら表現も直し、量も足させると、子どもの側では作業が3つ同時に増えます。

止まっている場所 見えている様子 つい取る対応 その対応で起きること 実際に変える箇所
題材が決まらない 1行目が始まらない。「書くことがない」と言う 「何でもいいから書いて」と促す 選ぶ範囲がさらに広がり、決まらない状態が続く 書く範囲を先に狭める
順番が決まらない 口で話すと出てくるのに、書くと前後する。同じことを2回書く 構成メモの用紙を渡す 埋める作業が1つ増え、本文に入る前に力尽きる 型を1つだけ渡して固定する
文にできない 「〜で、〜で」と続く。主語と述語がかみ合わない 表現をその場で直させる 直される箇所が増え、次から書く量が減る 一文の長さだけを扱う
終わりまで届かない 途中で手が止まる。マス目が大きく余る 「あと5行」と足させる 中身と関係のない引き伸ばしが入る 終わりの位置を書く前に決める
毎回同じ形になる 「楽しかったです」で終わる。去年と同じ組み立て 言い換えの語彙リストを渡す 語だけが変わり、中身は変わらない 場面の描写を1つ足させる

見分け方は簡単です。原稿用紙を伏せて、口頭で3分だけ話させます。話せば出てくるなら、題材はあります。その場合、止まっているのは2番目以降です。話しても出てこないなら、1番目から手をつけます。

この確認は、書かせる前に行ってください。書き始めてから止まった子に口頭でやり直させると、失敗のやり直しとして受け取られます。

題材が出ないときは、書く範囲を狭める

「作文の題材が思いつかない」と言う子に対して、範囲を広げる声かけは逆に働きます。「何でもいい」は、選択肢が無限にあるという意味で、大人でも決めにくい条件です。

やることは範囲を狭めることです。時間、場所、人のどれかで区切ります。「昨日のこと」ではなく「昨日の給食の時間」、「運動会」ではなく「リレーで並んで待っていた間」。区切ると、思い出す対象が数分間の場面に限定され、細部が出てきます。

決められない子には、選択肢を3つ出して選ばせます。ゼロから出すのと、並んだ中から選ぶのとでは負荷が違います。3つは保護者が出して構いません。ここで出しているのは題材そのものではなく、選ぶという作業の練習です。

出てきた材料は、単語のまま書き留めます。文にしてしまうと、その時点で本文を書き始めることになり、あとで同じ内容を書き直す二度手間が発生します。単語が5つか6つ並べば、材料としては足ります。

「特別なことが何もない」と言う子に、特別な出来事を探させないでください。作文で読みごたえが出るのは出来事の珍しさではなく、そのとき何が見えていたか、誰が何と言ったかという細部のほうです。普通の一日でも、切り取る幅を狭めれば書くことは出てきます。

順番と終わりの位置は、書き始める前に決める

話すと出てくるのに書けない子は、材料ではなく並べ方で止まっています。ここで構成メモの用紙を渡すと、埋める作業が1つ増えるだけで、本文にたどり着く前に集中が切れます。

渡すのは型を1つだけです。「あったこと」「そのとき思ったことや言ったこと」「いま思い返して思うこと」の3つの箱で足ります。学校で習った型があるなら、そちらに合わせてください。家庭と学校で別々の型を教えると、子どもは書き方が2つある状態を抱えることになり、どちらでも迷います。

終わりの位置も、書き始める前に決めます。決め方は行数かマス目で、時間ではありません。時間で区切ると、進みの遅い日にいつまでも終わりが来ず、書くこと自体が長い作業として記憶されます。

終わりまで届かない子には、量を増やす前に減らします。3行でも最後まで通した経験があるかどうかが、次に書き始めるまでの重さを決めます。一度も書き終えたことがない状態で長さだけを求めると、作文が「終わらない宿題」として定着します。書き終える経験が数回たまってから、行数を1〜2行ずつ足していく順番のほうが崩れにくくなります。

文にできないときに見るのは、一文の長さだけ

「〜で、〜で、〜で」と読点でつながっていく文章は、話し言葉のまま書いている状態です。話すときは息継ぎと相手の反応で区切りが入りますが、書くときにはその合図がありません。

指示は1つに絞ります。「。で切る」だけです。文法の説明はしません。主語と述語のねじれは、一文が長いことから生じている場合が多く、短く切ると自然に減ります。ねじれを直接指摘しても、その場では直せますが、次の文でまた同じことが起きます。

書いたあとに、本人に音読させてください。息が続かない場所、読みながら本人が言い直した場所が、切るべき位置です。これは家庭でできる直しのうち、最も手間が少なく、しかも本人が自分で気づける形になっています。声に出して読む習慣そのものについては、小学校低学年の家庭学習で何を優先するかで扱っています。

ここで避けたいのは、表記から直すことです。誤字、送り仮名、句読点の位置は目につきやすく、指摘もしやすいのですが、そこから直し始めると、子どもは「間違いが少ない文章」を目指すようになります。目指した結果として起きるのは、短くて当たり障りのない文章です。書く量が減ってしまえば、直す材料も減ります。

直しは1回に1か所だけ入れる

書いたものに全部の指摘を入れると、次に書く量が確実に減ります。返ってきた紙が赤で埋まっている状態は、子どもから見て「全部だめだった」という一つの情報にまとまります。どこを直せばよいかは伝わりません。

直しには優先順位があります。上から順に、直したときに文章全体が変わる度合いが大きい順です。

  1. 意味が通るか。 読んで場面が分からない箇所があるなら、そこだけを聞きます。「ここは誰が言ったの」と質問すると、抜けていた情報が口から出ます。それを1文足させます
  2. 一文の長さ。 長すぎる文を1か所だけ選び、2つに切らせます
  3. 段落の切れ目。 場面が変わるところで改行が入っているか。低学年では扱わなくて構いません
  4. 表記。 誤字、送り仮名、句読点。ここは最後です
  5. 語彙。 「楽しかった」を別の言葉に置き換える作業は、いちばん最後で足ります

1回の作文で扱うのは、このうち1つだけです。同じ指摘を数回にわたって続けるほうが、5つを一度に伝えるより定着します。

直しと同じ回数だけ、よかった場所を1か所だけ具体的に言ってください。「上手だね」では場所が分かりません。「この一文で、その場の様子が見えた」のように、どの部分がなぜよかったのかを指します。ここが具体的だと、次の作文で同じことを再現しようとします。

なお、保護者が読み手と評価者を同時に務めると、書くこと自体が家庭内の緊張と結びつきます。作文は正解がない分、評価する側の言葉が強く残ります。役割の渡し方そのものは家庭学習で保護者はどこまで関わるかで扱っていますが、作文に限れば、読み手の役だけを外に出して、評価しない側に回るという分け方も取れます。

教科の記述問題と作文は、別の作業として扱う

「記述が苦手だから作文を書かせる」という対応は、噛み合わないことがあります。この2つは、必要な作業が違うためです。

教科の記述問題では、答えの材料が本文や資料の中にあります。字数、使う語、答え方の形式も指定されています。やることは、材料を探して、指定された条件に合わせて並べ直す作業です。作文では、材料を自分で出すところから始まります。条件はあっても、書く内容そのものは指定されません。

どちらで困っているかは、材料が与えられている問題で手が止まるかどうかで分かれます。本文から答えを抜き出す形式でも止まるなら、書く力ではなく読み取りの側の話です。算数の文章題で条件を読み落とす場合の切り分け方は、算数が苦手な小学生への対応で扱っています。

逆に、記述問題は書けるのに作文で止まる子は、条件が与えられれば動けるということです。この場合、家庭で作文を書かせるときも、テーマと字数と型を先に決めてから渡すほうが進みます。自由に書かせることが目的ではありません。

読み手を家庭の外に置く判断はどこでするか

続けるかどうかを決めるのは、子どもが上手になったかどうかではありません。読み手の役を家庭が担い続けられるかどうかです。次のうち2つが同時に起きているなら、読み手を外に移す時期に来ています。

  • 直しをめぐる衝突が毎回起きていて、原稿用紙を出すこと自体が嫌がられ始めている
  • 書いたものに何を返せばよいか判断がつかず、「上手」以外の言葉が出てこない
  • 学年が上がり、字数指定や意見文など、条件のついた課題が増えてきた
  • 保護者が読み手を兼ねているため、子どもが内容を選んで書くようになっている(家庭で話題にしにくいことを避ける、など)

外部に出す場合に確認するのは、教材の内容よりも「何が返ってくるか」です。点数や評価だけが返る形式では、次に何を変えればよいかが分かりません。返却の周期や提出の手間まで含めて判断する手順は、小学生の作文添削サービスの選び方にまとめています。

外に出したあとも、家庭の役割がなくなるわけではありません。返ってきたものを子どもに渡して終わりにすると、指摘は読まれないまま積み上がります。返ってきた日に、指摘のうち1つだけを一緒に確認する。この作業は家庭に残ります。

今週やること

  1. 原稿用紙を出す前に、書く予定の内容を口頭で3分だけ話させます。ここで出てくるかどうかで、題材の問題か、それ以降の問題かが分かれます
  2. 表の5つから、当てはまるものを1つだけ選びます。複数当てはまる場合は、上にあるほうから手をつけます。題材が出ていないのに一文の長さを直しても、直す文章がありません
  3. 直しは1か所だけにします。同時に、よかった場所を1か所、具体的に伝えます

これを3〜4本続けたところで、最初に書いたものと並べてください。比べるのは上手さではなく、書き始めるまでの時間と、書き終えられた回数です。この2つが動いていれば、見立ては合っています。

どちらも動かない場合は、選んだ止まり方が違っていた可能性があります。もう一度、口頭で話させるところから確認し直してください。なお、5つのうち2つが重なっていることもあります。その場合は上にあるほうだけを扱うと、下に出ていた症状が一緒に消えることがあります。題材が決まらないまま書いていた子は、決まった時点で一文の長さも落ち着く、というような順序で動きます。